家具の話 A
1 | スツール ・・・・・ その製作 |
2 | 小引き出し ・・・・・ その製作 |
3 | 盆・トレー ・・・・・ その製作 |
4 | 額 ・・・・・ その製作 |
1.スツ-ル |
まず、スツールと言うと、背もたれのない、もしくは小さく、簡易的な椅子と言えるでしょう。 椅子にとって背もたれ部はデザイン的にも構造的にも重要でこの箇所で全体が決まってくるものと考えています。 その為“その重要” な部分がないスツールは比較的自由にデザインが出来、そして製作も容易と言えます。したがって価格も抑えられ、お客様にとって気軽にお買い求めできる“きっかけの家具”になるのです。 まずは多用途に使えデザイン性の高いスツールから手作り家具の良さを解って頂けたらな〜等と考えながら作っています。 これまで定番や単品で数多くのスツールを作ってきましたが“座る機能”+αを組み込んだ物を多く作ってきました。 座る機能に重点をおいたスツールをなぜ作らないかと言うと背もたれのない(小さい)椅子はどんな頑張っても安楽性は高くならないので、それなら座り心地は程々でも多用途の方がいいんじゃないの と言う事です。 その為、座は板の場合掘り込まずフラットにします。そうすれば飾り台としても使えるのです。また幅があれば踏み台にもなります。 その他の機能としてはスタッキングと言って“積み重ねる機能”があると来客時に便利になります。 私の好きなスツールは上の写真の物で2003年の展示会の出品の為作ったもので同時出品のテーブルと同じ“樹木”をイメージしたデザインで各所に手作業でしかなしえない加工が施されている為手間は掛かりますが個性的な作品に仕上がり好評を得ています。 天板(座板)面は2枚の板が接着なしに並び、意匠で両端にチギリと言う蝶形の象嵌を施してあります。脚部は木の幹をイメージした造形で面は切り出しナイフで成型し丹念にサンドペーパーで仕上げてあります。 当初は幹の凹凸を表現する為ノミ跡をそのままにしようと思いましたが、これはかなり難しく稚拙な技術では“醜悪”な物になってしまうのです。よく言う“ラフ”な仕上げと言いますが「計算された高い技術のラフ」と「稚拙な技術のラフ」は大きな隔たりがあり、今の私はその中間に属しているので、まずは自分の技術をしっかりと見つめた正確な加工を目指し、その中で表現したいと考えています。 だから意図した凸凹よりもツルッとした面になったのです。 材木は座にミズナラを、脚部にウォールナットを使い、コントラストをデザインにしてみました。 スツールの製作 よく作るスツールの構造に丸ホゾと言うのがあるのですが、これはボール盤(ドリル)で開けた丸穴に切り込みを入れた丸棒を差し込みクサビを打って固着させるのですが、作るのはそれほど難しくないのですが、材の含水率が高いと、ホゾが痩せて抜けてしまうのです。 その為、電気コンロで温めた砂利の中にホゾ先を入れ材木中の水分を0%近くまでもっていき、組み立てるのです。そうすればどんな環境でもホゾが緩むことはありません。 無垢材を使うって経験や知識も大事ですが後々の事を考える想像力が一番必要なのだと思っています。 |
2.小引き出し |
3.盆・トレー |
まず、上の写真の千鳥格子飾り盆ですが、これもグループ展の際に製作し、発表したものです。千鳥格子と言う構造に興味を持ち、木工雑誌を見て構造を調べ盆に取り入れたものです。 千鳥格子とは建具等に用いる組み方で縦横の材をただ合わせるのではなく、“組み”それに“差し込み”簡単に外れない作りになっています。(木の知恵の輪です) この製作は理屈さえ解れば難しくはないのですが、緻密な作業が要求されます。 組み合わせ部分の嵌めあいが緩いと隙間が出て売り物にならないし、キツイと組めません。縦横何十箇所全てキッチリとしていなければいけないのです。 その為に専用のアジャストカッターと言う幅広の丸鋸(昇降盤)の刃物を購入したのですが、届いてビックリ、9万円弱の値段でした。 一個24,000円の盆をいったい何個作って売ればモトが取れるの〜!!って感じですが、ないと困るし・・・。 そうやって少しづつ機械・工具が増えていくのです。 その他に、板組みや框組み、繰り物、なんかの盆が定番にありますが、今の時代、絶対必要で、需要が多い物ではないのか?値段が高いのか?デザインが???なのかは不明ですが盆のヒット商品ってないんですよね〜。でもボチボチと出て行くので細々と作り続けています。 盆・トレーの製作 写真の千鳥格子飾り盆、少し上記しましたが、とにかく真剣勝負!!で丁寧にそして基本に忠実に、“確認”そして“確認”の連続作業で疲れましたが、木工の原点を見直す良い経験になりました。 この盆以降千鳥格子を取り入れた物は作っていませんが、木材が縦横に組み合わされる和のデザインの面白さは注文品には取り入れています。 |
4.額 |
額にも様々な技法と言うかスタイルがあり、上の様な一般的な留め(45度)に切った材を組み合わせた物と一枚板を繰りぬいた物、その他には木を組み合わせた物があります。 当工房の定番、最初は繰り抜き額のみでしたが留め額も製作し始めました。 展示会やイベントでは必ず問い合わせがある商品ですが、普通の額ではまったく注目されません。特に留め額は手作り感がないのです。 塗装はウレタンやラッカーを施し、機械を駆使して正確に加工しないと45度に組めないし目違いと言って段差が出てしまいます。 なので既製品との差異を出しにくいというのがホントのところでしょうね。 そこで、展示会直前いろいろ考えていましたが、材の色と内側のマット(厚紙)の色で個性を出して展示会に出そうと製作をしていたのです。 もう、展示会の1週間前でギリギリ徹夜仕事で疲労困憊で作業していたら、なんと痛恨のミス、それも初歩的なプロとして恥ずかしい失敗です。 裏側の吊り下げ金具のビス穴をハンドドリルで開けてたら表まで貫通してしまったのです。堅いナラやメープルの後に軟らかいセンを開けたら勢い余って表まで!! その時は「あぁ〜あ、もったいないけど自分用に使うしかないかなぁ〜」と思って、分けておいたのですが、作業を終え、反省を込め眺めたり擦ったりしてたら閃いたのです。 「この間違い穴を隠すのに小さいダボを埋めてランダムな水玉模様にしてはどうかなと」 そして、1個試しに製作してみたら可愛いのです。 特に白いセンやメープルは色の付いたダボが引き立ちます。 完成した額もバンバン穴を開けダボを埋め新製品の完成!! 失敗から成功に繋がる稀な例となりました(笑) もちろん展示会ではそこそこ売れましたよ。 ペットや赤ちゃんの写真を飾るには最適です。 額の製作 45度の留め額の難しい点は、まずは正確な加工なのです。 4つの角がピッタリくっついていないとダメな訳で、例えば45・5度だと×8だから全部で364度になっちゃう訳で・・・。お話になりません。 ピッタリか、もしくは経年収縮を計算して気持ち外隙位がベストですね。 内側が隙いてはいけません。 その様にして切った材を組み合わせ接着し側面角に丸鋸で引き込みを入れ三角形の材を詰め込み接着すれば完成です。 こう書くと簡単ですが、非常に手間が掛かり1個や2個じゃあ大赤字。まとめて数十個作らないといけないのですが単純作業で飽きます。一人工房で単純作業は辛いけどラジオなぞ聴いて気を紛らわせます。 組み立てが終わったら塗装なのですが、こればっかりはオイルじゃダメなんですよ。 材が乾くと内側が離れてしまい最悪はバラバラに!! なので、収縮を止める為にも塗膜塗装が必要でラッカーかウレタンを吹きます。 お客様はご理解の上ご購入を。 |